夜の静けさの中、外から「ガサガサ…」という音。
最初は風かなと思っていたけど、どうも違う。
その音はだんだん近づいてきて、まるで何かが落ち葉を踏みしめているような気配。
「まさか、イノシシ?」
このあたりでもたまに出るとニュースで聞いたことがある。
少し怖くなって、カーテンのすき間からそっと外をのぞいた。
🌾まるい影、そして3つのシルエット
外灯の明かりに照らされた庭の端。
そこに見えたのは、まんまるいおしりが3つ。
ドキッとした。思わず息を止める。
大きめの影が1つ、少し小さな影が2つ。
まるで子どもを連れて動くように、3つの影がゆっくりと動いている。
よく目を凝らして見てみると、その動きが思ったよりもゆったりしていて、
鼻先をひくひくさせながら地面を探るような仕草。
「……あれ?イノシシって、こんなに丸かったっけ?」
🐾正体は、まさかの“たぬき親子”
しばらく見ていると、
先頭の1匹がこちらをチラッと見た。
暗がりの中で、まるい顔と短い足、ふわふわの毛並み。
そう、たぬきだった。
しかも、後ろには小さな2匹がピョコピョコとついていく。
親たぬきがゆっくり歩きながら、時々立ち止まって振り返る。
そのたびに、子たぬきたちは「まって〜」と言わんばかりに駆け寄っていく。
なんだかその姿が微笑ましくて、怖さよりも温かさの方が大きくなった。
🌕秋の夜の、ほんの小さな奇跡
しばらくして、たぬき親子は庭の端から森の方へと姿を消した。
足跡がうっすら残っていて、なんだか夢を見ていたみたいな気分。
「うちの庭、そんなに居心地が良かったのかな?」
なんて思いながら、しばらくそのまま外を眺めていた。
秋の夜って、少し寂しい空気が流れるけど、
こうやって“偶然の訪問者”があると、
なんだか心がじんわりあたたかくなる。
自然と共に生きてる感じがして、少し誇らしい気持ちにすらなる。
🍂あとがき:珍道中は、いつも突然に。
今回の“たぬき事件”は、最初こそびっくりしたけれど、
終わってみれば心が和むひとときだった。
次にまた「ガサガサ…」と音がしたら、
今度は怖がらずに「おかえり」って言えるかもしれない。
人と自然の距離って、案外近いのかも。
そして、そんな些細な出来事が、
日常の中にちょっとした物語をくれるのかもしれな


