【🌸戦国ファンタジー第12話 白峰の理 ― 氷と義、そして影❄️】

戦国ファンタジー
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三河の空に、白い紋がふっと浮かんだ。クロノスの信託だった。

『三日後、十一の理を三河へ集めよ。』

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私は静かに頷き、準備を整えた。

三日後。

最初に信康が到着し、続けて半蔵、忠勝、幸村、半兵衛、毛利元就、橘 煉、天草四郎が姿を見せる。

そのあと、山風をまとって武田信玄が歩いてきた。私が救い上げた命だ。

「呼ばれたとあれば、参らぬ理由はない。」

そして、雪の気配を運んで謙信と兼続が揃って現れた。

十一の理がそろった。

林から佐々木小次郎がひょいと顔を出す。

「呼ばれちゃおらんが……まあ来てみた。」

私は全員を見渡す。

「これで十一人。

 次に動く理は“氷”と“義”。

 謙信、兼続。白峰へ向かおう。」

白い紋が開き、光の道が現れる。二人が踏み込み、私と小次郎もあとに続いた。

白峰の空気は鋭く冷たく、吹雪が壁のように渦を巻いていた。

「ここが……」

兼続が息を呑む。

「理が動く時、場所は選ばない。」

私は雪の奥を見つめる。

吹雪が割れ、二つの道が現れた。

右は蒼い光。左は白の冷気。

「兼続は右。謙信は左。

 ここから先は、自分の心で越えて。」

二人は静かに進んでいった。

小次郎は足を止め、吹雪を眺める。

「今回は出る幕でもないな。」

私は微かに笑って彼の横を通り過ぎた。

右の道――兼続の前に、蒼い霧と共に過去の影が現れる。

救えなかった者たちが責めるように語りかけた。

「義のためだと口にしながら……お前は誰を救った?」

義心剣の光が弱まりかける。

兼続は胸に手を当てて目を閉じ、深い痛みを飲み込んだ。

(義とは……死ぬ覚悟ではない。生きて支える覚悟だ。)

「義は犠牲じゃない!」

兼続の声が響き、蒼光が弾けた。

義心剣に蒼紋が浮かび、試練は終わった。

左の道では、謙信の前に氷龍が現れた。

「上杉謙信。その心に宿す怒りを見せよ。」

裏切り、戦乱、失ったもの――

過去が次々と映し出されるたび、謙信の氷刃は砕けていく。

謙信は砕けた欠片を胸に当てた。

(私は怒りのために戦ってきたわけではない。祈りのためだ。)

静寂が胸に満ち、目を開くと氷龍が頭を垂れた。

「その静寂こそ氷の理。」

白い光が集まり、謙信の手に“龍雪の氷刃”が形成された。

吹雪が止み、二人が私の前へ戻った。

義の蒼、氷の白――どちらの刃も美しい。

「……おめでとう。二つの理が確かに形になったね。」

空に雪紋が浮かび、クロノスの声が降りる。

『義と静寂は対にあらず。

 いずれも“心を整える理”。

 道は分かれど、辿り着く場所は同じ。』

白い雪が光を帯びて舞い、白峰は静かに幕を閉じた。

帰路につき、雪道を歩いていたとき、小次郎がふいに足を止めた。

「……来る。」

白い空気を裂いて、一人の女が姿を現した。

黒髪を無造作に束ねた背の高い武士。女の宮本武蔵。

彼女は小次郎を見て薄く笑う。

「やっぱり、あんたね。佐々木小次郎。」

小次郎も静かに目を細めた。

「武蔵。まだ生きてたか。」

「死ぬ気はないわ。それにしても……妙な一行ね。」

武蔵は私たちをなめるように見渡し、小次郎にだけ視線を戻す。

「今の私は、まだあんたと斬り合う時じゃない。また会うわ。」

そう言い残して、雪に紛れて消えた。

「知り合い?」

私が訊くと、

「……腐れ縁の女さ。」

小次郎はそれだけ言って前を歩いた。

雪景色が途切れ、三河の土と風が戻ってくる。

陣門が見え、兵たちが駆け寄る。

「環様! お戻りです!」

私は微笑み、仲間たちを振り返った。

「皆、おかえり。」

信康、忠勝、幸村、半蔵、半兵衛、毛利、煉、天草四郎――

十一の理が揃って迎えてくれた。

理はさらに深く動き出していた。

【✨次回予告】

白峰から戻った三河の陣に、

大地を揺るがす足音が近づいてくる。

武田信玄――土の理。

真田幸村――火の理。

揺るがぬ“支え”と、

迷わぬ“炎”。

次回

大地の理 ― 信玄と幸村、揺るがぬ覚悟🔥

火が道を切り開き、

大地がその背中を押す。

二つの理が、ひとつの未来へ重なり始める。

【🌙クロノス予告】

『――次に動く理は土と火。

 揺れぬ地と、迷わぬ炎。

 どちらも“進むための力”なり。』

『大地は支え、炎は照らす。

その果てで、道はひとつとなろう。』

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