霧深き川中島。千曲川の流れを背に、二つの女の軍勢がぶつかり合った。
甲斐の虎・武田信玄――その旗には「風林火山」の四字。
越後の龍・上杉謙信――背に掲げるは「毘」の一字、毘沙門天の加護を示す旗。
二人はただの敵ではなかった。
女であるがゆえに背負わされた孤独と矜持を、互いに知る者同士だった。
白馬を駆けた謙信の太刀が閃き、信玄の軍扇が火花を散らして弾き返す。
「天が授けし理は、我にある!」
「女の武威こそ、天下を裂く力だ!」
刃と刃が二十合、三十合。鎧は削れ、血が散り、誰も二人の間に近づけなかった。
光秀は冷静に見つめる。
「女同士…まるで鏡合わせの宿命」
蘭丸は声を張り上げた。
「謙信様が押されてる!」
信康は動揺し、環を振り返る。
「環! このままでは!」
環は決意した。矢と炎の渦を突き抜け、戦場の中心へ走る。
「戦は理で積むもの! 未来には“福祉”がある! 弱きを救う仕組みがあるんだ!」
刃を振り下ろしかけた信玄の動きが止まり、謙信も目を見開いた。
環は全身で叫ぶ。
「奪い合うだけじゃ未来は続かない! あなたたちが女として背負ってきた痛みを、救う理に変えられる!」
信玄は長い沈黙の後、軍扇を下ろして笑った。
「……女の私にこそ響く言葉だ。理の軍師よ、一度、貴様に従おう」
謙信は太刀を収め、環を見つめる。
「恩は忘れぬ。だが宿命はまだ終わってはいない」
こうして川中島の大戦は決着せず。
女と女の宿命の激突は、一人の少女の言葉で中断された。
その夜、武田陣に忍び寄る黒い影――服部半蔵のクノイチ。
月光に刃が光り、クロノスの声が囁く。
「救いは新たな歪みを呼ぶ。影は必ず光を追うのだ」
🌸次回予告
「救ったはずの命が、新たな刃を呼ぶ。
服部半蔵のクノイチ、その刃は誰を狙うのか――」
⏰時間予告
「救いの光が差すほど、影は濃くなる。
運命の歪みは、歴史をさらに揺さぶる」
🏯第4話 画像用メモ(案)
舞台:雪の残る山中・夜明け前の陣屋前
登場:
武田信玄、威厳と慈愛を併せ持つ少女将。戦装束の上に赤い羽織。
上杉謙信、清廉で静かな美貌、白の戦装束。信玄と対をなす存在。
直江兼続、義心を胸に秘めた若き智将。
真田幸村、明るく芯のある少女戦士。
情景:雪が舞う中、信玄と謙信が互いに手を結ぶ。
構図:中央で信玄と謙信が手を結び、後方に兼続と幸村。
トーン:雪の光に包まれた「和解と希望」。

🔗 次回:第4話『影、忍び寄る刃』はこちら
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