京の夜を、紅蓮の炎が照らしていた。
三好の残党、足利の乱軍――その数、千を超える。
本多忠勝の槍が火花を散らし、真田幸村の紅蓮槍が夜空を裂く。
だが、敵の波は尽きることがなかった。
「押し返せぇ!」
忠勝の咆哮が響く。
だが兵の息は荒く、膝をつく者も多い。
環は剣を構えたまま、汗と血に濡れた頬を拭う。
「理を掲げても……数は止まらない。」
クロノスの声が、遠くから響いた。
「数は理の歪み。
だが、それもまた“世界の秩序”のひとつだ。」
環は息を整え、剣を掲げる。
「なら、その秩序を……救う理で超えてみせる!」
だが戦況は残酷だった。
義輝将軍の陣も崩れ、光秀は背を向けて去っていく。
燃える京の塔が倒れ、幕府の終焉が近づいていた。
義輝:「剣に宿る理を信じよ……それが、我らの最後の誇りだ。」
将軍の声が炎に飲まれ、光が消える。
その瞬間、環の視界が揺れた。
立ち尽くす彼女の前で、敵の軍勢が押し寄せる。
「もう……限界……?」
息が途切れ、剣先が地に触れたその時――
夜風が変わった。
潮の香とともに、静かな足音が響く。
「戦の理を語るなら、まず数を知れ。」
その声に兵たちが振り向いた。
月明かりの中に立つひとりの剣士。
蒼き衣をまとい、長大な刃を背に負う。
佐々木小次郎。
彼が一歩進むと、風が裂けた。
妖刀《物干し竿》が抜かれると同時に、海のような静寂が走る。
その一閃は風を断ち、敵兵十を薙ぎ払う。
「理など要らぬ。ただ斬る。
それが剣であり、真理だ。」
敵がざわめき、怯える。
半蔵が驚愕する。
「味方……なのか……?」
環はその背を見つめ、息を呑んだ。
「あなたは……誰?」
小次郎:「風が告げた。
光が傾くとき、影が立つ――と。」
小次郎が踏み出すたびに、敵の陣形が崩れていく。
その姿はまるで“影の理”そのものだった。
環たちは一時的に敵を押し返し、
炎の中に一瞬の静寂が訪れる。
しかし――
本多忠勝:「押し返したぞ!」
真田幸村:「だが……まだ来る!」
遠くから、再び大軍の旗が揺れる。
三好・足利の連合軍が、地を覆い尽くす。
小次郎が振り向き、淡々と呟いた。
「一人増えたところで、数の理は変わらぬ。」
環は唇を噛み締める。
「それでも、守る理は消えない!」
二人の間に、炎の光が揺れた。
夜風が吹き抜け、血と塩の匂いが混じる。
疲労が全身を支配し、環はその場に崩れ落ちた。
小次郎:「……敗北は、理の始まりでもある。」
環はかすかに微笑む。
「あなたも……理を信じているのね。」
その言葉に、小次郎は何も答えず、
妖刀を納めて闇に溶けていった。
波が寄せ、炎の音だけが残る。
疲労と限界の中、環は空を見上げた。
そこには、かすかな光が差していた。
夜明け前の、祈りにも似た淡い光――
まるで、次に訪れる“理”を告げるように。
🌸次回予告(第6話 足利崩壊編)
理の果てに、祈りの声が響く。
敗北の夜明け、環が見る“もう一つの光”とは――。

画面説明🔥佐々木小次郎vs環
💬 クロノスの囁き(心情の一文)
「数は理を示し、理は導きを紡ぐ――夜明けはすぐそこに。」
📜 次回予告
第6話 「義の継承 ― 蒼天と紅の約定 ―」
(近日公開予定)
🔗 前回の話はこちら
🌸物語の始まりはこちら


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