🏯あらすじ
夏の陣が終わり、戦場に静寂が訪れた。
だが、佐々木小次郎の剣はまだ血を求めていた。
彼は戦の果てで“理”を見失い、己の剣が何を守るためにあるのかを問う。
壊れた刀を手に、夜の風を裂く。
その瞬間、彼の剣が呼応する――
虚空剣《アマノハバキリ》、十二の理を揺り起こす“覚醒の刃”。
それは、後に“束ねの剣”を導く最初の光となった。
⚔️第一章 静寂の戦場
風が、夜の戦場を撫でていた。
血と煙の匂いが消えぬまま、
佐々木小次郎はひとり、静かに剣を抜いた。
「これが、勝利の音か……。」
あまりに静かだった。
敵も味方もいない。
残されたのは、刃と己だけ。
彼の剣――「物干し竿」と呼ばれた長刀。
その切っ先が月を映し、淡い光を放つ。
だが今夜、その刃は違う色を帯びていた。
紅ではなく、紫の光。
まるで“空間そのもの”を裂くような気配だった。
⚔️第二章 名もなき剣
「斬ることでしか、見えぬ理があるのか……。」
小次郎は目を閉じた。
脳裏に浮かぶのは、かつての戦友、そして宿敵・宮本武蔵の姿。
あの男の剣には“命の温度”があった。
だが、自分の剣には、ただ“空”がある。
「俺の剣は、空(くう)を斬る剣か……。」
そのとき、地面に落ちていた一振りの刀が微かに光った。
古びた柄、砕けた鍔。
拾い上げると、まるで自らの刀と共鳴するように震えた。
「……名もなき剣か。」
それが、後に“虚空剣《アマノハバキリ》”と呼ばれる刃である。
触れた瞬間、彼の意識は闇に沈み、
無数の声が響いた――。
“理は眠る。
光と闇、炎と氷、義と智……
全ては束ねられる時を待つ。”
⚔️第三章 理の覚醒
小次郎は息を呑んだ。
剣の中に、十二の理の残響が宿っていた。
そしてその中心に、ひとつの祈りの声があった。
“……天草。”
見たこともない光景が広がる。
聖堂、十字架、光の柱――。
その中で、祈る少年の姿が見えた。
「……あれが、“理の外”の者か。」
小次郎は静かに立ち上がる。
空を見上げると、月が二重に輝いていた。
その交差する光の中心で、剣が震える。
⚔️第四章 空を断つ剣
「理を断つは、理のためか――それとも、人のためか。」
小次郎は刀を掲げた。
虚空剣が光を帯び、紫電が走る。
地面が裂け、風が止まる。
その刃は、空間そのものを断ち切っていた。
その瞬間、遠くの戦場――天草の祈りの光が反応する。
二つの力が重なり、
世界を貫くような共鳴音が響いた。
“目覚めよ、理の器たち。”
紅蓮、雷轟、蒼天、義心――
十二の武器が同時に震えた。
それが、“理の覚醒”の始まりだった。
🌄第五章 黎明の歩み
紫の光が収まり、小次郎は静かに刀を鞘に戻した。
夜風が戻り、月が穏やかに照らす。
「……俺の剣は、人を斬るためではない。
理を、束ねの旗へ渡すための剣だ。」
虚空剣の柄に残る刻印が、微かに輝いた。
「アマノハバキリ」――神をも断つ空の剣。
やがて小次郎は踵を返し、
朝焼けに向かって歩き出す。
黎明の光が彼の背を照らした。
その先で、環と天草が待っていることを、
彼はまだ知らなかった。
💫次回予告
剣が理を断ち、祈りが理を結ぶ。
二つの理が重なり、束ねの旗が揺らぐとき――
新たな理“智と魂”が動き始める。
次回:外伝Ⅱ「黎明の誓い ― 天草四郎、理に目覚める」

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