あらすじ】
足利戦の余波が残る九州の地。
光と闇の理がせめぎ合う中、環たちはそれぞれの“想い”を抱えていた。
天草時貞がリベリオンロッドを掲げると、夜空を裂くように光が広がり、
魂と理が交差する――そして、旅は再び三河へと動き出す。
【本文】
夜明け前の空は、まだ焦げたような赤を帯びていた。
九州の戦場には煙と風が残り、焦げた草の香りが漂う。
その中で、環はひとり天草の背中を見つめていた。
「終わるんだね……」
そう呟いた環に、天草は振り向かずに答える。
「終わりじゃない。ここからが“始まり”だよ、環。」
彼女の声は静かで、けれど確かに空を震わせた。
リベリオンロッドが高く掲げられると、光の帯が空へと伸びる。
倒れた兵の魂がその光に導かれるように昇り、
夜の闇が、ゆっくりと理に還っていった。
環は目を閉じ、胸の奥で呟く。
――これが“理”なのだ。誰かを救い、誰かを見送る。
争いの果てに残るのは、怒りでも悲しみでもなく、ただ一筋の希望。
その希望を形に変えるように、忠勝が槍を地に突き立てた。
「俺たちは……これからどこへ向かう?」
「三河だ。」
環の声は迷いなく響く。
「都の理は壊れた。次は“束ねの地”で、もう一度旗を掲げる。」
小次郎が刀を納め、空を仰いだ。
「また忙しくなるな。」
「ふふ、でも悪くない。」
半蔵が軽く笑い、紅蓮の空に舞う光の粒を見つめた。
その光はまるで桜の花びらのように、儚く、けれど強く輝いていた。
やがて天草が一歩前に出る。
風が彼女の衣を揺らし、髪を舞い上げた。
「環、あなたがこの世界を束ねる。私は未来へ理を託す。」
その言葉に、環は深く頷いた。
天草の身体が光の粒となり、空へ溶けていく。
彼女の声が、クロノスの囁きと重なった。
『未来を恐れずに進みなさい。理はあなたと共にある。』
その瞬間、環の背後に立つ仲間たち――忠勝、幸村、小次郎、半蔵――が一斉に歩き出す。
もう誰も、迷いはなかった。
九州の風が彼らの背を押し、東の空から朝陽が差し込む。
それはまるで、新しい時代の幕開けを告げる光のようだった。
環は振り返らずに言った。
「時貞、あなたの理は確かに受け取った。次は――三河で。」
そうして、理を束ねる旅が再び始まった。
【クロノス予告】
「束ねの剣、再び理を集う。
三河に帰還せし旗の下、時を越えた邂逅が始まる。
次回 ― 戦国ファンタジー第11話:三河帰還 ― 静寂と再会の刻 ―」
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