戦国ファンタジー 第29話

💫戦国ファンタジー💫
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⚔️武器覚醒・試練編 ― 兆しの距離 ―

🌅 朝は、完全には来なかった。

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空は明るくなったが、色が足りない。

夜の名残が薄く延び、輪郭だけを残して地に伏している。

天草四郎時貞は、その中を歩いた。

人の歩幅で、普段と同じ速さで。

――何も変わらない。

それが、この朝の結論だった。

🔥 兵たちは起き、火を起こし、簡単な食を取る。

誰もが昨日の続きとして今日を始めている。

だが、時貞だけが、昨日を「続き」として扱えずにいた。

背にある気配は、沈黙したままだ。

触れようとすれば触れられる距離。

それでも――

距離が、ある。

「……近いのに、遠い」

声に出した言葉が、静かに自分へ戻ってくる。

武器は拒んでいない。

だが、迎え入れてもいない。

🕯️ 契約とは、終わりではない。

関係の始まりだ。

その関係が、今はまだ「距離」を必要としている。

近づけば応える関係ではない。

時間を要する関係。

時貞は、水を汲みに川へ向かった。

💧 冷たい水に手を浸す。

指先の感覚を、何度も確かめる。

――人であること。

それが、今日の基準だった。

水面に映る顔は、昨日と変わらない。

疲れも、緊張も、特別な光もない。

「……それでいい」

そう呟くと、風がわずかに流れた。

背の沈黙は、応えない。

だが、否定もしない。

🌿 兵の一人が、何気なく言った。

「今日は、空気が変だな」

別の者が笑って返す。

「夜が長かっただけだろ」

時貞は、その会話を聞きながら歩く。

誰も気づいていない。

だが、“何か”は確実に、世界に滲み始めている。

それは音でも、光でもない。

距離感だ。

近いものが、遠くなる。

遠いはずのものが、近づく。

🌙 背の気配が、ほんのわずかに重くなる。

重圧ではない。

存在感でもない。

――測られている。

時貞は立ち止まらない。

立ち止まれば、距離は縮まらないと知っている。

武器は眠っている。

試練は、始まっていない。

だが、

始まる前の時間が、最も人を試す。

歩き続ける。

人の歩幅で。

祈りを持たず、誓いを振りかざさず。

ただ、今日を生きる。

🌄 空が、少しだけ高くなった。

何も起きない朝。

それでも、確実に昨日とは違う朝。

武器覚醒は、まだ先だ。

だが――距離は、縮まり始めている。

🔮クロノス予告

近づくな

離れるな

距離を保て

試練とは

力ではなく

歩みの速度を問うもの

⏳次回予告

第30話:武器覚醒・試練編 ― 静かな観測 ―

違和感は、ついに“他者”に届く。

だが、まだ誰も、その正体を知らない。

戦国ファンタジー 第30話 — 覚醒前章:問いと運命の刻

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