⚔️武器覚醒・試練編 ― 静かな観測 ―
🌫️ それは、誰かの胸騒ぎから始まった。
戦場でも、夜でもない。
ただの移動の朝。
ただの準備の時間。
それなのに、空気だけが、昨日と違っていた。
🔥 兵の一人が、火を起こしながら言った。
「……今日、音が少ないな」
隣の兵が首を傾げる。
「音? 風はあるだろ」
「ある。けど、届き方が違う」
言葉にできない違和感。
誰も“異変”とは呼ばない。呼べない。
🌿 天草四郎時貞は、その会話の外側にいた。
歩く速度は変わらない。
呼吸も、視線も、昨日と同じ。
だが――距離が、違う。
近くにいるのに、触れられない。
遠くにいるのに、目が離れない。
それは注目ではない。
観測だった。
🕊️ 別の兵が、何気なく振り返る。
「……あの人、さ」
言葉を選ぶ間。
理由を探す沈黙。
「前から、ああだったっけ?」
誰も答えない。
否定も、肯定も出ない。
事実は一つだけ。
“変わっていないのに、変わったように見える”。
🌙 時貞は、背にある沈黙を意識しない。
意識しないことを、選んでいる。
契約の夜から、何も起きていない。
力も、声も、兆候もない。
それでも――
世界の側が、先に反応している。
💧 川辺で水を汲む。
水面が揺れ、像が一瞬だけ歪む。
歪んだのは、像ではない。
見る側の距離感だ。
「……近づくな」
誰かの無意識が、そう判断する。
恐怖ではない。敵意でもない。
配慮に近い。
🔥 火の前に集まる兵たち。
会話は続くが、中心が空いたままだ。
誰もそこに立たない。
誰も、理由を言わない。
それでも、その“空白”は、確かにそこにある。
🌫️ それは結界ではない。
壁でもない。
まだ名のない間隔。
時貞は、それを壊さない。
縮めもしない。
越えようともしない。
――今は、保つ時だと知っている。
🕯️ 遠くで、誰かが小さく呟く。
「……触れない方がいい気がする」
同意も反論も起きない。
沈黙が、その言葉を包む。
それで十分だった。
🌄 空が、少し高くなる。
朝は進み、時間は流れる。
武器は眠っている。
試練は始まっていない。
だが、観測は始まった。
それは、力の兆しではない。
資格の測定だ。
時貞は歩く。
人の歩幅で。
世界の反応を、受け止めながら。
🌙 背の沈黙は、応えない。
だが、拒みもしない。
距離は保たれ、
空白は続き、
世界は“待つ”という選択をした。
🔮クロノス予告
力は、見せる前に
置かれる
覚醒とは
使うことではない
観測に耐えた者だけが
次の問いへ進む
⏳次回予告
第31話:武器覚醒・試練編 ― 問いの輪郭 ―
名のない違和感は、やがて“問い”の形を取る。
だが、答えはまだ求められない。