🌙戦国ファンタジー第34話|観測の理 ― 天草四郎時貞、未来を視る夜

💫戦国ファンタジー💫
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✨静寂は、ただの静けさではない

夜は、音を奪う。

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けれど本当は――音を奪うことで、真実を浮かび上がらせる。

焚き火の赤が揺れている。

環と元康、半蔵、武蔵、小次郎、三成。

みんなが同じ場所にいるのに、心はそれぞれ別の方向を向いていた。

天草四郎時貞は、少し離れた暗がりに立つ。

星の位置を確かめるように、空へ視線を上げた。

「……揃い始めた。けれど、まだ足りない」

言葉は吐息に混ざって消える。

彼女が見ているのは、今この場の空気だけじゃない。

この夜の奥にある“未来の裂け目”だ。

🔮観測者が見る世界は、時間が折り重なっている

天草四郎時貞にとって、時間は一直線じゃない。

過去・現在・未来が、薄い膜のように重なり合っている。

たとえば――

🌫️今、焚き火の音がする。

同時に、別の場所で剣が鳴る音がする。

さらに先で、誰かの声が泣き崩れる。

それを“視てしまう”のが、観測者の宿命。

「……こんな夜ほど、世界は動く」

彼女は自分に言い聞かせる。

焦るな。

まだ言うな。

だけど、逃げるな。

🧩小さな違和感が、一本の線になる

見回りで拾った断片は、どれも小さい。

武田の地で感じた、風の乱れ 上杉の境で見た、氷のひび 織田の名を聞いた瞬間の、空気の沈み 立花の地に残った、誰かの気配 毛利の領で揺れた、時の影

それらは別々に見えた。

けれど今、夜の中で一本に繋がり始めている。

天草四郎時貞は、そっと手を胸に当てた。

神格に至った存在として、身体の中心に“光”がある。

だが、その光は万能じゃない。

光はすべてを照らす。

同時に、照らしたものの“影”も濃くする。

「影……」

そう呟いた瞬間――

🌑未来の裂け目が開く

夜風が止んだ。

焚き火の火が、ふっと小さくなる。

そのとき、天草四郎時貞の視界が“二重”になった。

現実の焚き火の光と、もうひとつの光景が重なる。

⚔️《未来視:燃える城、笑う影》

燃える。

城が燃えている。

人々の叫び。

鉄の匂い。

灰が舞う。

そして、その炎の中に――

**死んだはずの者の“気配”**がある。

「……信長……?」

名前は出さない。

出してはいけない。

けれど、確かに“それ”はそこにいる。

本能寺で消えたはずの気配。

なのに、完全には消えていない。

“死んだフリ”という言葉が、喉元まで上がってくる。

だが、観測者は断定しない。

断定した瞬間、未来は固定される。

天草四郎時貞は歯を食いしばった。

「……まだ、言うな……」

🕯️《未来視:霊の器と、闇を選ぶもの》

場面が切り替わる。

白い器。

霊を宿す器。

それが誰かの手に渡る。

そして――器が、闇を選ぶ。

闇は、ただの悪ではない。

闇は、理を正すための“裁き”でもある。

だが、闇が間違った者に渡れば――

裁きは暴走する。

「……悪心」

小さく呟いた瞬間、視界がさらに裂ける。

⚖️《未来視:LUCIFER SYSTEMの影》

それは人じゃない。

それは武将でもない。

それは“仕組み”だ。

冷たい光。

規律。

裁き。

封印。

輪廻。

――LUCIFER SYSTEM。

天草四郎時貞の心臓が、瞬間だけ強く脈打った。

「……三成……?」

だが今の三成は、まだ何も知らない。

夢すら見ていない。

武器も持たない。

ただ、元康の隣で静かに座っている。

その三成が、“裁きの仕組み”へと繋がる未来。

それは救いなのか、封印なのか。

観測者である天草四郎時貞にさえ、完全には読めない。

💠観測の代償

未来を視た後、現実へ戻ると、必ず反動が来る。

視界の端が滲む。

呼吸が浅くなる。

胸の奥が、冷たく痛む。

「……っ」

膝がわずかに揺れた。

それでも倒れない。

倒れたら、ここで終わる。

天草四郎時貞は、深く息を吸う。

自分の中の光を整える。

神格とは、強さではない。

“耐える資格”だ。

🌸環に伝えるべきこと、伝えてはいけないこと

焚き火の方を見る。

環は、ずっと静かだった。

けれど、その静けさは“迷い”じゃない。

環は束ねる者。

束ねる剣。

そして、統合者。

天草四郎時貞は知っている。

この者に、すべてを言えば――

環は背負ってしまう。

背負った瞬間、環は強くなる。

だが強くなる代わりに、孤独になる。

「……伝えるのは、ひとつだけ」

天草四郎時貞は、ゆっくりと歩き出した。

🔥焚き火の前、静かな会話

環がこちらを見た。

元康も気配を察して視線を上げる。

半蔵は影の中で動かない。

武蔵と小次郎も、言葉を飲み込んで耳を澄ます。

三成は――何も分からない顔をしている。

天草四郎時貞は、環の隣に座らず、少し距離を取って立った。

「環」

「……時貞。どうした」

天草四郎時貞は、言葉を選ぶ。

未来視の内容をそのまま言わない。

断定しない。

ただ、核心だけを渡す。

「“理の揺らぎ”は、もう偶然じゃない。

 あなたが拾った違和感は、すべて繋がっている」

環の目が、わずかに細くなる。

理解した眼だ。

「……やっぱりか」

天草四郎時貞は続けた。

「今はまだ、冬の陣を始める時じゃない。

 始めれば――勝てても、失う」

それは、環がすでに言った結論と重なる。

だが観測者の言葉には、別の重みがある。

環は焚き火の火を見つめ、静かに頷いた。

「焦らない。揃える。整える」

天草四郎時貞は、ここで止める。

信長の影も、霊の器も、LUCIFER SYSTEMも――

言わない。まだ言えない。

言えるのは、ひとつだけ。

「……それと」

環が目を上げる。

天草四郎時貞は、短く告げた。

「“死んだはずのもの”が、時々息をする夜がある。

 そういう夜は、情報が勝手に集まる。

 だから――半蔵を、裏で動かして」

半蔵の気配が、ほんの一瞬だけ濃くなった。

返事はない。

だが、了承の合図だ。

⚖️元康の視線が、未来の入口を測る

元康が口を開く。

「時貞……三成は?」

その問いは鋭い。

元康は、三成の未来を直感している。

友情だけで繋がった者ほど、未来の傷を早く嗅ぎ取る。

天草四郎時貞は、三成を見た。

三成は困ったように笑った。

「俺、なんか……関係あるのか?」

天草四郎時貞は、すぐに否定しない。

肯定もしない。

ただ、今言える範囲で答える。

「あなたは、まだ何も見なくていい。

 今は“友”でいることが、いちばん大事」

元康が小さく息を吐いた。

それは安堵ではなく、覚悟の息だ。

🌀武蔵と小次郎、剣が鳴る前の兆し

武蔵が、焚き火を棒でつつきながら言った。

「観測者ってのは、面倒だな。

 未来を見ても、言えねぇんだろ?」

天草四郎時貞は、少しだけ笑った。

「言えば、未来が壊れる。

 言わねば、誰かが傷つく」

小次郎が肩をすくめる。

「だから、剣がいる。

 壊れる前に斬るために」

武蔵が頷いた。

「だが、今はまだ斬れねぇ。

 理が揃ってねぇ」

環が静かに言う。

「揃える。私が束ねる」

その瞬間、焚き火の火が、ふっと強くなった。

まるで、言葉に反応したみたいに。

🌙天草四郎時貞の胸に残る“言えない言葉”

会話は終わった。

みんなはそれぞれの場所へ戻る。

天草四郎時貞も、夜の暗がりへ戻ろうとした。

けれど、足が止まる。

言えなかった言葉が、胸の奥で燃えている。

――信長は生きているかもしれない。

――霊の器は闇を選ぶ。

――LUCIFER SYSTEMの影が近い。

――三成は裁きの輪に触れる。

言えない。

まだ言えない。

言えば、環が背負う。

元康が焦る。

半蔵が無理をする。

武蔵と小次郎が早く斬りすぎる。

だから観測者は、黙る。

未来のために黙る。

それが“光天使”の役目だ。

🔮クロノスの導き

夜の奥から、声がした。

はっきり聞こえるわけじゃない。

でも、確かに“意味”がある。

——観測者よ、言うな

——束ねる者に、重さを渡しすぎるな

——影は、必ず現れる

——その時、理は揃っていなければならない

天草四郎時貞は、目を閉じた。

「……分かっている」

そして、小さく呟く。

「私は、見守る。

 揃うまで、整うまで」

🌸夜明け前、理は静かに積み上がる

夜明けはまだ遠い。

けれど、確実に近づいている。

環が束ねる。

元康が支える。

半蔵が裏を動かす。

武蔵と小次郎が剣の準備をする。

三成はまだ、何も知らないまま、友でいる。

そして天草四郎時貞は――

未来の裂け目を、ただ観測し続ける。

▶️次回予告 🌙

🔥

🌙 第35話|武器取りの行方

武器取りに向かうのは、宮本武蔵・佐々木小次郎。

その道行きに、環と松平元康が同行する。

剣はまだ語られず、理だけが先に進む。

――すべてが終わったその先で、

戦国ファンタジー 第35話

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