❄️🏯 戦国ファンタジー 第41話

💫戦国ファンタジー💫
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――冬の陣・包囲の理――

夜明け前の空は、異様なほど静まり返っていた。

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風がない。

鳥の声もない。

焚き火の爆ぜる音すら、どこか遠い。

城下を覆う闇は、ただの夜ではなかった。

押し黙るように、息を潜めている。

信長は城の高みから、その気配を見下ろしていた。

空気が重い。

だが、それは恐怖ではない。

湿った布をゆっくりと被せられていくような、逃げ場のない圧だった。

「……なるほどな」

誰に向けたわけでもない呟きが、夜に溶ける。

城の四方。

森。

丘。

街道。

すべてが、同時に整っていた。

兵の数は読めない。

だが、それは問題ではなかった。

——数ではない。

——陣形でもない。

——武威でもない。

意図だ。

意図だけが、完璧に揃えられている。

🌑

斥候は戻らなかった。

正確に言えば、「消えた」のではない。

討たれた痕跡も、捕らえられた気配もない。

ただ、戻る理由を失ったように、戻らなかった。

道は塞がれていない。

だが、進むたびに、同じ場所へ戻される。

森に入れば、森が続く。

丘を越えれば、丘が重なる。

城下へ向かえば、城下が遠ざかる。

「閉じている……いや」

信長は目を細めた。

「切り離している、か」

ここで、ようやく理解した。

この包囲は、城を落とすためのものではない。

兵を殲滅するためのものでもない。

——信長という存在を、歴史から切り取るための準備。

勝っても負けても、意味は同じ。

討たれたとしても、逃げ延びたとしても。

「信長はここで終わった」

そう語れる状況を、先に作っている。

🌒

「随分と手が込んでいる」

信長は、どこか楽しげに笑った。

恐怖はなかった。

怒りもなかった。

あるのは、納得だけだ。

自分が積み上げてきたもの。

壊してきた秩序。

踏み越えてきた理。

それらすべてが、今ここで試されている。

「逃げろ、という話じゃないな」

この包囲は、選択肢を奪っていない。

ただ、意味を固定している。

ここに留まれば、消える。

ここを出れば、やはり消える。

ならば。

信長は、静かに背を伸ばした。

「……世界が俺を試すというなら」

視線は、闇の奥。

まだ姿を見せぬ“何か”へ向けられる。

「俺も、世界を試してやろう」

🔥

城内に、不思議な静けさが広がっていた。

兵たちは気づいている。

だが、騒がない。

恐怖ではなく、覚悟の空気が満ちている。

信長は、ゆっくりと歩き出した。

退路へ向かうでもなく、戦場へ向かうでもない。

ただ、中央へ。

「ここから先だ」

誰に命じるでもなく、言い切る。

「巻き込まれたくない者は、ここで止まれ」

誰も動かなかった。

秀吉だけが、一歩だけ前に出る。

「……殿」

「分かっているだろ」

信長は振り返らない。

「これは戦じゃない。

 だが、逃げ場もない」

秀吉は、それ以上何も言わなかった。

🌫️

霧が、いつの間にか立ち込めていた。

白ではない。

黒でもない。

時間そのものが曖昧になる霧。

歩いた距離が、意味を失う。

戻ったはずの場所が、初めてに変わる。

兵の声が、遠くで二重に響く。

足音が、半拍遅れて返ってくる。

信長は立ち止まり、霧の中で呟いた。

「……来るか」

その声に、応えるものはない。

だが、確かに感じる。

——見られている。

——測られている。

——選別されている。

これは討伐ではない。

これは封鎖でもない。

消すための包囲。

終わらせるための舞台。

信長は、霧の奥へ一歩踏み出した。

❄️

冬の陣は、まだ始まっていない。

だが。

信長は、すでにその中にいた。

⏳ 次回予告

次話、第41話――

霧は形を持ち、

幻は意思を持つ。

幻惑、開幕。

🔮 クロノスの囁き(短縮版)

時は、まだ止まっていない。

ただ――

ずれ始めている。

冬の陣は、

刃ではなく

迷いから始まる。

⚔️戦国ファンタジー第42話|外の気配、冬の前触れ(静寂と兆し)

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