時の流れは、束ねの剣に新たな試練を告げようとしていた。
――理は、西へ流れる。
四国で結ばれた十三の理、その光は海を越え、九州の地へと届く。
潮風が頬をなでる。
九州の地は、一見静まり返っていた。
だが、その静寂の裏には、長く続く戦と支配の影が蠢いていた。
島津の勢力が南方より伸び、九州の国々は次々と屈服。
その支配は「力こそ秩序」という思想のもとに築かれていた。
理を説く者は笑われ、民の声は風にかき消された。
そんな中、環の軍が西へと進んでいた。
旗には“理”の紋。
それは、戦を終わらせるための戦。
「理なき力に、未来はない。」
環の言葉が、秋風のように凛と響く。
🌸人の理を掲げる女武将
橘宗茂――。
その名を聞けば、九州の者なら誰もが知る勇将。
だが今、彼女の胸には葛藤があった。
島津との同盟を保つことで民を守れるのか。
それとも、理を貫き独立を選ぶべきなのか。
戦場で、傷ついた子供を抱きかかえる宗茂の姿があった。
「戦は、誰のためにあるのか……。」
その問いに答える者は、誰もいない。
その時、紅の旗を掲げた部隊が現れた。
環の軍だった。
「橘宗茂、貴女が守ろうとする“理”を見せてほしい。」
環の言葉に、宗茂は剣を構える。
「人の理を掲げるなら、この地で試されよ。」
火花が散り、二人の刃が交わる。
⚔️理と力の狭間
戦は短く、だが激しかった。
宗茂の剣には慈しみがあり、環の剣には意志があった。
交わる刃の中で、宗茂の瞳が開かれていく。
「理は、守るためにあるもの……か。」
彼女は剣を納め、静かに膝をついた。
「この理に、命を託す。」
環は頷いた。
その瞬間、理の旗が光を放つ。
十三の理のうち、最後の一片――“人の理”が結ばれた。
🌕時の揺らぎ
戦の終焉と共に、空に微かな歪みが走る。
風が止まり、草木が揺らぐ。
環が見上げた空の奥に、
“何か”が目覚めようとしている気配があった。
――理が揃う時、時はその価値を問う。
それは、まだ誰にも聞こえない声。
クロノスの囁きだけが、静かに響いていた。
⚜️クロノスの導き
――理が揃う時、封印は静かに軋む。
光は影を求め、影は光を試す。
そして、時はその均衡を見極める。
橘宗茂が人の理を掲げた瞬間、
世界の時はわずかに震えた。
彼女の旗が翻るその下で、
束ねの剣・環の中に“理の循環”が生まれていく。
遠くの時空で、まだ名も知らぬ剣士が目を開ける。
それは――夏の陣へと続く“影の胎動”。
💫次回予告
第11話:戦国九州編・後編 ― 炎の終戦 ―
島津との最終決戦。
橘宗茂が理を掲げ、環が束ねの剣を振るう。
その果てに、封印の光が開かれる――。
👉 戦国ファンタジー第10話:九州決戦(前編)― 光と炎の狭間 ―

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