🔹三河の空白
三河の朝は、まだ冬の冷気が残っていた。
焼けた土の匂いが風に混ざり、静かな空気が戦の余韻を伝えてくる。
足利義輝が倒れ、勝利したはずの武将たちは胸に空白を抱えたまま歩いていた。
松平元康もまた、その重さを誰より深く抱えていた。
「まだ……終わっていない。」
そう呟き、彼は一人で山道へ向かう。
勝った。しかし国はまだ立ち上がっていない。
ならばまず、自分の“理”を定めなければならない。
山深く進んだ先に、小さな祠があった。
誰にも顧みられない古びた祠。
だが、元康は呼ばれた。
祠の奥で光が脈打つ。
それは剣の形をしていた。
触れた瞬間、光が元康の胸を撃ち抜く。
「守るとは、力ではない――道を示すことだ。」
声なき声が響き、曇っていた心がほどけていく。
光剣は未完成ながらも“黎明の核”を宿し、彼の理と共鳴した。
元康は剣を握りしめ、息を吐く。
「次は……京都だな。」
風向きがそう告げていた。
🔹服部半蔵 ― 影との試練
同じ頃、服部半蔵は深い森の中を進んでいた。
紫の霧が漂い、森は異様な静けさに包まれている。
半蔵が奥へ踏みこむと、突然、気配が割れた。
そこに“もう一人の半蔵”が立っていた。
影そのもののような存在。
表情も言葉もない。
ただひとつの問いだけがある。
――逃げるのか、向き合うのか。
半蔵は迷わず前に出た。
影と重なり、闇が刀の形を取る。
朧影刀(おぼろかげとう)。
握った瞬間、闇が晴れ、風が京都の方角を示した。
半蔵は静かに頷く。
「元康様と同じ道……ここが次の地か。」
🔹本多忠勝 ― 雷鳴の丘
一方その頃、本多忠勝は雷雲の下にいた。
山の上で雷が渦を巻き、地面を震わせている。
その中心に“槍”が突き立てられていた。
雷轟の槍――
それは忠勝の鼓動と同じリズムで光を放つ。
触れた瞬間、雷が弾け、忠勝の全身に光が走る。
「守り抜く力……これもまた理。」
雷が収まり、空は京都の方角を照らした。
忠勝は槍を肩に担ぐ。
「元康様の剣、半蔵の影……そして俺の雷。
三つ揃うのは、京都だな。」
🔹三武将、京都へ
三人は別々の地で覚醒し、しかし同じ方角を見ていた。
京都。
そこに“次の理”がある。
そこが“試練の地”。
松平元康の光
服部半蔵の影
本多忠勝の雷
三つの理は、ひとつの都に集う運命だった。
三武将はそれぞれの道を進みながら、京都へと歩みを重ねていく。
空気は変わる前触れのように揺れ、遠くで時代が軋む音がした。
――これはまだ、序章にすぎない。
⏳次回予告
三つの理を手にした元康・半蔵・忠勝。
その歩みはついに“都・京都”で交わる。
そこで待つのは試練か、覚醒か、それとも――新たな運命。
🔮クロノスの導き
理は集まり、道は交わる。
光・影・雷――三つの理が揃う時、歴史は静かに形を変える。
京都で開く扉は、過去ではなく“未来”への入口である。