🌸 戦国ファンタジー第15話・後編 — 三理、京都にて響き合う🌸

戦国ファンタジー
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三理、京都にて響き合う

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京の空は、うっすらと灰色に揺れていた。

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冬の気配が混じりはじめた風は冷たく張りつめて、

その奥に何か「見えない歪み」を抱えているようでもあった。

松平元康は歩を止めて、静かに空を仰いだ。

――胸の奥がざわついている。

それは恐れではない。

むしろ、“呼ばれている” と感じるような、深いところで鳴り続ける合図だった。

背後から、服部半蔵が静かに近づく。

「……感じるか、元康殿。

 この都、どこか“理”が乱れている」

「うむ。嫌な圧が走っておる。

 まるで封印が軋む音じゃ」

本多忠勝も肩の槍を軽く揺らし、緊張しながら辺りを見渡した。

「だが俺たち三人が揃った。これで道は開ける。

 あとは――お前が迷わないことだ、元康」

元康は思わず苦笑した。

「迷いがあったのは、三河におった頃までよ。

 いまは違う。…半蔵、忠勝。おぬしらがいたから、ここまで来れた」

その言葉に、二人は視線を交わし、わずかに口元をゆるめた。

三人の間に流れる空気は、

戦場で何度も死線を越えた“同士”のものだった。

しかし――その絆は、この日の京都でさらに深まることになる。

◆ 京・白梅寺の邂逅

京の北側、白梅寺。

古い寺の庭に、一際強い風が吹いた。

「……っ!」

元康の胸の聖剣が光を帯びた。

反応は、寺の中心にある古い石塔。

「妙だ。ここに“光”の理が残っておる」

半蔵が闇の刀を抜き放つと、影が走った。

忠勝の雷槍も青白い火花を散らす。

三理が重なると、石塔に刻まれた紋様が“ゴゴッ”と震えた。

――まるで三人を待っていたかのように。

石塔の奥から光があふれ、そこに「白い波紋」がゆっくり広がった。

「これは……道か?」

忠勝が眉を上げる。

「いや、違う。これは“縁”じゃ」

元康が息を呑んだ。

「三人であるからこそ、開いた道――そういう気配だ」

半蔵は目を閉じ、確かめるように影の気配を探る。

「元康殿。

 光の理は、おぬしを中心に集まってきておる。

 だがそれは、ただの“神格の覚醒”ではない」

「なんじゃと?」

「三河の時と今とでは、おぬしの『在り方』が違う。

 昔は“守られる側”だったが、今は違う」

忠勝が、太い腕を組んだまま言う。

「元康。

 俺と半蔵が支える理は《雷》と《影》。

 どちらも、お前が“前に進もうとする意志”に呼応しとる。

 つまり、お前自身が“仲間を導く存在”に変わってきとる」

元康は驚いた表情で二人を見た。

「わしが……導く?

 わしなどが、そこまで――」

半蔵が静かに首を振った。

「違う。“お前だから”できるのだ」

「そうだ。

 三河で泣いてた頃の元康とは違う。

 今のお前は、もう立派な“光の核”や」

忠勝の声は、不思議とあたたかかった。

その瞬間、元康の胸の光が溢れた。

三理が共鳴し、寺中に光と影と雷が走る。

「――っ!!」

元康は思わず膝をつきかけたが、

左右から半蔵と忠勝が支えてくれた。

「……二人とも……」

「気にするな。三人で一つだ」

「三理、ここにて覚醒す」

その言葉とともに、三人を中心に眩い柱が立ち昇った。

◆ 三理・完全共鳴

三つの理が重なった瞬間、

空気が一変した。

京都の空全体が震え、

見えない“封印の層”が波打った。

三人は揃って空を見上げた。

「……さっきより強くなっておる」

「封印が軋んどる。

 これはただの乱れやない」

忠勝も険しい表情で空をにらむ。

「誰かが――この都で“理”を動かしておる」

元康は思わず、胸を押さえた。

胸の奥で、何かが脈打つ。

(――この先で、わしを待っている者がいる)

それは、まだ名前も姿も見えない“何者か”。

だが元康の本能が告げていた。

そこへ、半蔵が静かに告げる。

「元康殿。

 三理が揃ったのは吉兆。

 だが、この都で起きていることは“前触れ”にすぎん」

「前触れ?」

「うむ。この先で――

 おぬしの“理”を揺さぶる者が現れる」

忠勝が雷槍を肩に乗せた。

「だが安心せい。

 元康、お前一人で戦わせる気はない。

 俺ら三人はセットや」

元康は強く頷いた。

「わしは一人ではない。

 半蔵、忠勝……共に行こう。

 この都で何が起きていようと、三人で正すのじゃ」

三人が並び立った瞬間、

空に走っていた揺らぎが、まるで“応える”ように収まっていった。

だが、それは嵐の前の静けさに過ぎなかった。

◆ 最後の場面:明日、運命の扉が開く

白梅寺の門を抜けると、

夕陽が京都の街を赤く染めていた。

元康がふと歩を止める。

「二人とも……。

 ありがとう」

半蔵は少し目を細め、

「礼を言うのはこちらだ。

 元康殿が光を掲げたから、我らも剣を抜ける」

忠勝も笑った。

「お前が前に進む限り、俺たちもついていく。

 三人セットは代わらん」

元康は胸が熱くなるのを感じた。

(いつの間にかわしは……

 こんなにも“仲間”に支えられておったのか)

三人の背には、それぞれの剣が光ったままだ。

明日、運命の扉が開く。

元康が“ある人物”と出会い、

その理が大きく動きはじめる――

すべては次の物語へと続いていく。

🔮 クロノスの導き

“光を得る者は、必ず影と雷を選ぶ。

 三理の共鳴は、運命の扉を開く合図である。

 その扉の先で待つ者は――

 おぬしが避けてきた『試練の理』。

 しかし恐れるな。

 三人がつないだ縁は、

 やがて一人を救い、

 一人を導き、

 一人を覚醒へと導く。

運命の歯車は、静かに動き出した。”

⏳次回予告

三理が交わる京都の地で、三成・環・元康の絆が静かに芽生える。

同じころ、九州では宗茂が、そして山陰では元就が──

それぞれ“武器の理”に導かれ、新たな覚醒の扉を開こうとしていた。

理が揺らぎはじめる今、仲間たちの想いが、ひとつの光へと束ねられていく──。

戦国ファンタジー第16話|三成の夢と天草四郎の覚醒

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