🌸✨ **戦国ファンタジー第17話

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三河に響く、名もなき光の呼び声** ✨🌸

冬が近づき、空気が澄み渡る三河の里。

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環と元康は、次の巡察へ向かう前に、わずかな休息をとっていた。

静けさに包まれた朝。

風の音さえ柔らかく、戦の影などまるで存在しないように思える。

だが――その静寂の底で、誰かの声が微かに揺れていた。

環は空を見上げながら、その小さな震えに耳を澄ませる。

「……また来た。」

胸の奥でわずかな“理(ことわり)の震え”が起きる。

痛みではない。

不吉でもない。

ただ、遠くから手を伸ばしてくるような、ひどく柔らかい気配。

元康も気付いていた。

「環。今の、感じたか?」

「うん。三河だけじゃない。この数日、ずっと続いてる。」

ふたりは短く視線を交わす。

それは敵意を持つものでも、悪心が発する瘴気でもない。

もっと透明で、あたたかくて、やがて“光そのもの”になる気配。

だがその正体はまだ見えない。

🍂 揺らぐ理の輪郭 ― 三成が見た夢のもう一つの意味

その日の昼、三成が三河を訪ねてきた。

顔色は悪くない。けれど、いつもより声が静かだった。

「環殿……昨夜、少し妙な夢を見まして。」

三成の夢は、環たちが集まる前触れになりやすい。

そのため、環と元康は自然と表情を引き締める。

「どんな夢?」

「……名も知らぬ少女が、祠の前で膝を抱えていたのです。

誰も彼女に触れられず、ただ光だけがそこに降りてくる。

少女は泣いているのに、涙は落ちず……

風だけが、“まだ来ないで”と私に告げていました。」

環は胸の奥がざわりとした。

三成が見たもの。

環が感じている揺らぎ。

元康が気にしている微妙な波。

全部がひとつの地点へ収束しようとしている。

その少女が誰なのか、まだ分からない。

だが彼女の魂は――

すでにこの世界へ“呼吸”を始めている。

三成の夢の直後、風がひゅうと吹いた。

三河の祠の方向から、わずかな光が舞い上がり、空に溶けた。

環の胸の奥に、温かい痛みが刺さる。

(あ……呼んでる。)

元康が環を見る。

「環、無理するな。感じすぎてないか?」

「大丈夫。これは……痛くないんだよ。

ただ……懐かしい。」

懐かしい。

まだ会っていない少女なのに。

🌬️ 祠の前で起こった“小さな奇跡”

三人は祠へ向かった。

そこは昔から“名もなき祈りが集まる場所”として静かに残されている。

祠の前に立った瞬間、世界がひとつ息を飲むように静まった。

風が止み、木々が揺れず、空の色が薄く変わる。

その中心で――

ひとつの光が生まれ、ゆっくりと揺れた。

幼い息遣いのように。

小さな胸が上下するように。

誰かの“目覚め”が、祠の奥で静かに始まっていた。

環がそっと手を伸ばすと、光は環の指先に触れる前に消えた。

けれど、確かに触れた感覚だけは残った。

「……これは、理の胎動だ。

まだ姿はなくても、確かに生まれようとしている。」

三成が小さく息を飲む。

「つまり……少女とは?」

「天草四郎。

まだ名も形も持たないけど、魂だけはもう動き始めてる。」

三成は驚いたように、けれどどこか納得したような表情を見せる。

「では、これが“覚醒前の揺らぎ”というものか……。」

環は微笑む。

「うん。でも完全な覚醒は、まだ少し先。

冬の陣の前には間に合うよ。」

🔥 冬の陣への影 ― だが本物の敵ではない

風が戻った瞬間、環は確信する。

この揺らぎは冬の陣の予兆ではない。

迫る大戦の影でもない。

むしろ逆だ。

冬の陣が始まる前に、

この少女――天草四郎が覚醒し、理を補強してくれる。

それが世界の均衡になる。

環と三成と元康は祠を後にした。

背後で光の粒がふわりと空へ舞い、静かに消える。

環は歩きながら、小声で言った。

「三成、あの少女はきっとあなたも救うよ。

今はまだ遠いけど、つながってる。」

三成は驚いたように振り返るが、環はそれ以上言わない。

“光天使”となる前の天草四郎。

その魂は、すでに三人へ呼びかけていた。

🌕 そして夜――揺らぎがもう一度、環に触れる

夜、三河の宿。

環が眠りにつく直前、胸の奥がふわりと光った。

まるで小さな手が、環の胸に触れたように優しい。

(……まだ来ないで。まだこわい。

でも、あなたたちの声は届いてる。)

少女の声とも、風の声ともつかない囁き。

環は目を閉じたまま小さく返事する。

(大丈夫。あなたの行く道は、私たちが守るよ。)

その瞬間、胸の痛みが消えた。

代わりに、温かい光が環の体を包む。

これが――

天草四郎の“誕生前の光”。

まだ見えない少女が、世界に向けて初めて放った理の波。

冬の陣が始まる前に、最も大切な光が目覚めようとしている。

⏳次回予告

祠に眠る光は、ついにその輪郭を結びはじめる。

少女の魂は揺れ、震え、そして名を持つ。

それは――天草四郎。

のちに“光天使”として世界を照らす存在。

ぬ第18話:天草四郎 ― 理を呼ぶ、微睡(まどろ)みの覚醒 ―

🔮 クロノスの予告(囁き)

――揺らぎは兆し。

まだ名を持たぬ光は、冬の陣の前に“ひとつの理”へと結ばれる。

三河に触れた小さな手は、

のちに天と地をつなぎ、三人を導く 光の鍵 となる。

影はまだ動かない。

だが、光はすでに歩きはじめた。

「環、準備を。

光天使の目覚めは、冬の陣の幕開けより先に訪れる。

理はすでに、次の頁をめくっている。」

――クロノス

戦国ファンタジー第18話|新たな夜明けの始まり

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