🌙第20話|天草四郎、光の胎動 ― 静かに満ちる“神の理” ―

戦国ファンタジー
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夜明け前の空気は、どこかざわついていた。

冷たいはずの風が、妙にあたたかく皮膚を撫でる。

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天草四郎はひとり、森の奥に立っていた。

足元の落ち葉がわずかに光を帯び、まるで呼吸するように揺れている。

「……また、だ。」

胸の奥が、じわりと熱を帯びる。

それは痛みではない。

けれど明らかに“人間ではない何か”が目を覚まそうとしている気配だった。

光はまだ弱く、輪郭すら曖昧。

しかし四郎は本能で悟る。

――これは、あの日(19話)に降りた“光”の続き。

――まだ名を持たない、“神格の胎動”。

四郎は目を閉じる。

その瞬間、世界の輪郭がわずかに変わった。

耳元で、誰のものとも分からぬ声がかすかに囁く。

『まだ行ってはならぬ。理は整っていない。』

四郎は思わず振り返る。

だがそこには誰もいない。

声は幻ではなく、確かに光の中から響いた。

この世のものとは異なる、澄んだ響き。

「……“時”が揺れている。」

これまで感じたことのない感覚が胸を掠める。

時が重なり、ほどけ、また結び直されるような不可思議な歪み。

四郎自身が、その中心に引かれている。

まだ自分が“何になろうとしているのか”理解は遠い。

だが一歩ごとに、抗いようのない運命が近づいてくる。

その頃、遠く離れた三河では元康が静かに巡察の準備を進めていた。

冬の陣を前に、戦場の空気がわずかに変わり始めている。

――これは天草四郎だけの覚醒では終わらない。

――理全体が動き始める“前触れ”。

四郎は、胸の熱が少しずつ一定のリズムを刻むのを感じていた。

まるで、目に見えない心臓がもう一つ生まれたような感覚。

「まだ……完全じゃない。」

そう呟いた瞬間、光が一瞬だけ強く揺れた。

まるで「その通りだ」と告げるように。

⏳次回予告(第21話)

『揺れる理、三河に走る兆し』

天草四郎の胸奥で芽生えた“別の鼓動”。

同じ頃、三河の元康は空気のわずかな変化に気づき始める。

まだ誰も知らない――これは冬の陣へ続く 最初の揺らぎ。

🔮クロノスの導き

—光はまだ、形にならぬ“理”の胎動にすぎない。

やがて降り立つ者は、己の名すら越えて“使命”となる。

時は満ちつつある……環が揃う、その前に。

―クロノス

2025年12月8日:戦国 — 第21話

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