🗡️戦国ファンタジー 第25話

戦国ファンタジー
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🔔 天草四郎時貞 ― 武器取り・第一夜

第24話の夜は、まだ終わっていなかった。

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戦の気配はある。だが、刃が交わるには早い。

冬の陣までは、まだ日がある。

それでも――

理は、先に動いた。

🌑 夜の歪み

夜気が、重い。

冷たいのではない。

重く、沈むような感覚だ。

天草四郎時貞は、足を止めた。

理由は分からない。

だが胸の奥で、確かに“何か”が鳴っている。

「……来ているな」

誰に向けた言葉でもない。

それでも、口にせずにはいられなかった。

次の瞬間、風が止んだ。

焚き火の音が消え、草の揺れが凍りつく。

世界が――

彼女だけを残して、遠ざかった。

🕯️ 境界の出現

足元の感触が変わる。

土でも石でもない。

踏みしめているはずなのに、

“重さ”が返ってこない。

ここは現世ではない。

だが、完全な神域でもない。

――武器取りの境(さかい)。

神が武器を与える場所ではない。

武器が、持ち主を選ぶ場所。

天草四郎時貞は、迷わず前へ進んだ。

🔮 問いは声を持たない

音はない。

だが、問いは確かに存在していた。

❓ 「汝は、何を信じて立っている」

天草四郎時貞は立ち止まる。

祈る姿勢は取らない。

跪きもしない。

ただ、真っ直ぐ前を見据えた。

「……信じているものはある」

間を置き、続ける。

「だが、それは“救い”ではない」

空間が、わずかに揺れた。

「人は、救われないことがある」

「祈りが届かない夜もある」

一歩、前へ。

「それでも、立つ」

「それでも、見捨てない」

⚖️ 信仰と反逆

問いは続く。

今度は、より深く。

❓ 「神に従うか。理に従うか」

天草四郎時貞は、少しだけ笑った。

「……どちらでもない」

その言葉に、空気が張り詰める。

「神に従えば、人を切ることになる」

「理に従えば、祈りを捨てることになる」

彼女は首を振る。

「私は――

どちらにも、完全には従わない」

沈黙。

長い、長い沈黙。

それは拒絶ではない。

選別だった。

⚔️ 遠くで鳴る音

――カン。

金属でも、鐘でもない。

だが、確かに“武器の音”。

視界の奥で、何かが揺らめく。

まだ形はない。

だが、存在だけは分かる。

🔔 武器は、ここにある。

ただし――

まだ、出てこない。

🔥 理の圧

一歩進むたび、圧が増す。

力ではない。

重さでもない。

“覚悟”を測る圧だ。

天草四郎時貞の脳裏に、過去が流れる。

祈った日。

祈りを否定された日。

それでも、祈ることをやめなかった夜。

「……私は、神になるために来たわけじゃない」

その言葉に、圧が強まる。

「人の側に立つために、ここに来た」

🌌 武器の影

闇の中に、輪郭が浮かぶ。

剣ではない。

槍でもない。

長く、細く、

“叩くため”でも“斬るため”でもない形。

それは――

意思を通すための器。

天草四郎時貞は、足を止めた。

まだ、触れられない。

ここで触れれば、拒絶される。

これは武器取り。

覚醒ではない。

🕯️ 最初の通過

問いが、最後に一つだけ残る。

❓ 「汝は、敗北を受け入れられるか」

彼女は、即答した。

「受け入れる」

驚きはない。

迷いもない。

「勝てぬ戦もある」

「守れぬ命もある」

それでも――

「それを理由に、立つのをやめない」

空間が、静かに緩んだ。

🌑 現世への帰還

夜風が戻る。

音が、匂いが、温度が戻る。

天草四郎時貞は、元の場所に立っていた。

だが、確かに違う。

胸の奥で、

“武器がこちらを見ている”。

「……第一段階、か」

独り言のように呟く。

これは契約ではない。

だが、拒絶もされなかった。

――通過したのだ。

🔮 クロノスの導き

どこからともなく、声が重なる。

「よくぞ、ここまで来た」

「だが、武器はまだ渡らぬ」

「次は――選別だ」

天草四郎時貞は、静かに息を吐く。

「分かっている」

冬の陣まで、まだ日がある。

だが、武器取りはもう始まった。

🌌 余韻

星を見上げる。

同じ夜空だ。

だが、もう以前とは違う。

天草四郎時貞の背後で、

理が、静かに回り始めていた。

▶ 次回予告

第26話|⚖️ 武器取り・第二夜 ― 理の選別

武器は、信仰を試す。

そして――反逆をも。

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