⚖️ 天草四郎時貞 ― 武器取り・第二夜(理の選別)
冬の陣まで、まだ日がある。
だが、天草四郎時貞の夜は、すでに戻れない地点を越えていた。
第一夜を越えた身体は、軽くも重くもない。
ただ、密度が違う。
同じ夜気、同じ星空のはずなのに、世界が一段、深く沈んでいる。
胸の奥で、確かな脈が打った。
それは鼓動ではない。
選別が始まる合図だった。
🌑 再訪
歩みを止める前に、境は現れた。
昨夜の“武器取りの境”と同じ輪郭をしていながら、別物だ。
空間は狭い。
呼吸が、ほんのわずかに詰まる。
(……理が、近い)
天草四郎時貞は悟る。
ここからは、問いに「通る」だけでは足りない。
通った理由が、剥き出しにされる。
🕯️ 理は、冷たい
声はない。
だが、問いは刃のように明確だ。
❓ 「汝は、正しさを選ぶか」
正しさ。
人を救い、人を縛り、人を殺す言葉。
天草四郎時貞は、すぐには答えない。
視界に、過去が重なる。
祈りが掲げられ、
正義が叫ばれ、
それでも、切られた者たちの影。
「……正しさは、刃になる」
境が、ぴくりと動いた。
「弱い者を守るための正義が、
やがて弱い者を切る」
一歩、前へ。
「だから私は――
正しさを、選ばない」
⚖️ 反証
圧が返ってくる。
否定ではない。反証だ。
❓ 「では、誤りを許すのか」
天草四郎時貞は、目を伏せない。
「許す」
即答だった。
圧が増す。
境が、彼女を試す。
「だが、放置しない」
「止める」
「奪わせない」
一語一語が、重い。
「存在を否定することと、
行いを止めることは、同じじゃない」
境が、わずかに緩んだ。
🔥 理の第二層
問いは、さらに深くなる。
❓ 「汝は、勝利を選ぶか」
勝利。
多くを救い、同時に多くを切る概念。
天草四郎時貞は、首を振る。
「選ばない」
「勝利は、結果だ」
「目的じゃない」
境が、再び揺れる。
「勝つために人を切るなら、
それはもう、理じゃない」
🌌 記憶の干渉
圧が変質する。
問いではなく、干渉。
過去の祈りが、
折れた夜が、
血の匂いが――流れ込む。
天草四郎時貞は、耐える。
(逃げない)
祈りを捨てれば、楽だ。
だが、それは選別の失格。
🔔 武器の反応
闇の奥で、影が明確になる。
長い。細い。
剣でも、槍でもない。
🔔 武器は、記録している。
答えを。
姿勢を。
耐え方を。
だが、まだ――
渡らない。
⚖️ 理の第三層:敗北
最後の問いが落ちる。
❓ 「汝は、敗北を受け入れられるか」
天草四郎時貞は、即答した。
「受け入れる」
境が、沈黙する。
「守れない命がある」
「救えない夜がある」
彼女は、視線を逸らさない。
「それでも、立つ」
「それでも、次に繋ぐ」
🌑 通過
圧が、消える。
境は、彼女を押し返さなかった。
道が現れる。
だが、まだ先は見えない。
これは通過。
契約ではない。
🌌 現世
夜風が戻る。
星は同じ位置にある。
だが、背後に――
確かな“重み”。
天草四郎時貞は、息を吐く。
「……理は、通ったな」
🔮 クロノスの導き
「理は選別された」
「次は――意思だ」
冬の陣まで、まだ日がある。
だが、武器取りは最終段へ向かう。
▶ 次回予告
第27話|⚔️ 武器取り・第三夜 ― 契約直前
理は通った。
信仰も残った。
最後に問われるのは――意思。