🗡️戦国ファンタジー 第27話

戦国ファンタジー
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🔔 天草四郎時貞 ― 武器取り・第三夜(契約直前)

夜は、二度と同じ顔を見せない。

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それは、天草四郎時貞が最もよく知っていることだった。

第一夜で“呼ばれ”、

第二夜で“量られ”、

そして今――第三夜。

これは選別ではない。

これは確認だ。

武器が、最後に問う。

それでも、お前は立つのかと。

🌑 密度の違う夜

空は暗い。

だが、闇の質が違う。

音が遠い。

匂いが薄い。

身体の輪郭だけが、やけに鮮明だ。

天草四郎時貞は歩く。

歩いているというより、進ませられている。

拒否は、もう選択肢にない。

「……ここまで来たか」

独り言は、境界に吸われて消えた。

🕯️ 境は、閉じる

足元が消える。

前後左右の感覚が曖昧になる。

武器取りの境は、これまでで最も狭い。

逃げ道はない。

戻る道もない。

ここは、契約の手前。

天草四郎時貞は、立ち止まった。

🔮 最後の問いは、静かだ

声はない。

圧もない。

問いは、ただ“在る”。

❓ 「汝は、己を捨てられるか」

天草四郎時貞は、すぐに答えなかった。

“己を捨てる”。

それは自己犠牲ではない。

英雄の美談でもない。

名前を失うこと。

祈りを奪われること。

記憶を消されること。

武器は、それを要求している。

🌌 名前の重さ

天草四郎時貞は、自分の名を思い浮かべる。

それは、ただの記号ではない。

祈りと、怒りと、願いの集合体。

その名を捨てれば、

人の側には戻れない。

「……捨てられない」

その言葉に、境は動じない。

問いは続く。

❓ 「では、名を超えられるか」

彼女は、ゆっくりと息を吐いた。

「……それなら、できる」

⚖️ 己を超えるということ

「私は、私であり続ける」

「だが――」

一歩、前へ。

「私だけのためには、立たない」

それは否定ではない。

放棄でもない。

拡張だ。

「名があるから立つんじゃない」

「呼ばれなくても、立つ」

🔔 武器が、近づく

闇の奥で、輪郭がはっきりする。

長く、細い。

叩くためでも、斬るためでもない。

――ロッド。

だが、それはまだ“武器”ではない。

意思を宿していない。

武器は、最後に問う。

🔥 意思の確認

❓ 「汝は、神となる覚悟があるか」

天草四郎時貞は、首を振る。

「ない」

即答だった。

境が、わずかに揺れる。

「神になれば、人を救えない」

「神になれば、裁いてしまう」

彼女の声は低い。

「私は、人の側に立つ」

「神域に入っても、立ち位置は変えない」

⚔️ 武器の拒絶と承認

一瞬、境が硬化する。

拒絶かと思われた。

だが――違う。

それは確認だった。

武器は、神のための道具ではない。

人のために、神域へ踏み込む者の器。

天草四郎時貞は、視線を逸らさない。

「私は、力を欲する」

「だが、支配は要らない」

🌌 契約直前

ロッドが、彼女の前に浮かぶ。

触れれば、契約。

触れなければ、全ては終わる。

天草四郎時貞は、手を伸ばさない。

「……条件がある」

境が、静止する。

「力は、今はいらない」

「必要なのは――資格だけだ」

🔮 条件

「冬の陣が終わるまで」

「私は、この武器を振るわない」

その言葉は、武器への制限。

同時に、自身への誓約。

「人の理を、戦で壊させない」

「そのために、私は立つ」

🔔 契約

ロッドが、静かに応える。

――承認。

だが、光は弱い。

力は、封じられている。

天草四郎時貞は、ゆっくりと手を伸ばし、

初めて触れた。

熱はない。

だが、確かな“重み”。

🌑 現世へ

夜風が戻る。

星が、再び動き出す。

天草四郎時貞の背には、

武器が在る。

だが、それは眠っている。

「……終わったな」

武器取りは、これで終わり。

🔮 クロノスの導き

時が、語りかける。

「契約は成立した」

「だが、力は眠れ」

「目覚めは――試練の後だ」

天草四郎時貞は、静かに頷く。

🌌 余韻

冬の陣まで、まだ日がある。

だが、世界の配置は変わった。

天草四郎時貞は歩き出す。

武器を背負いながら。

まだ、振るわない。

▶ 次章予告

次章:試練・覚醒編

武器は在る。

だが、力は未だ眠る。

目覚める資格を、次に問われる。

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