🌸戦国ファンタジー 第32話🌸

💫戦国ファンタジー💫
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❄️観測者の沈黙 ― 理に触れた夜🌙

雪は音を奪い、夜は境界を曖昧にする。

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三河の外れ、月明かりだけが照らす山道を、天草四郎時貞は一人で歩いていた。

誰にも告げていない。

誰にも導かれていない。

それでも、ここへ来る必要があると、心の奥で理解していた。

足元の雪は柔らかく、踏みしめるたびに沈み、すぐに元へ戻る。

まるで「ここに来た痕跡すら残すな」と告げているかのようだった。

覚醒してから、時貞の時間感覚は変わった。

過去と現在、そして未来が、同じ距離に並んで見える。

選択の結果すら、先に知ってしまうことがある。

――それでも。

彼女は、立ち止まらなかった。

知っているからこそ、逃げられない。

未来は崩れている。

理が折れ、澪の生きる世界は、静かに、確実に壊れていく。

誰かが止めなければならない。

その役目が、自分であることを。

天草四郎時貞は、もう否定できなかった。

森の奥で、空気が変わった。

冷たいはずの夜気に、わずかな熱が混じる。

静寂の底に、言葉にならない圧が生まれる。

そこには、何も見えない。

だが確かに、「境界」があった。

理と理の狭間。

触れれば、元には戻れない場所。

一歩踏み出せば、

武器を取らぬまま、試練に触れることになる。

怖さはあった。

だが、それ以上に――

「知らずに戻る」ことの方が、恐ろしかった。

時貞は、足を止めない。

その瞬間、音がした。

耳で聞く音ではない。

思考の奥、魂の深部へ直接落ちてくる、低く、静かな響き。

――試練は、まだ始まっていない。

時貞は息を呑んだ。

――だが、すでに触れている。

名を持たぬ声。

それは誰かではなく、理そのものだった。

境界の向こう側で、何かが揺れる。

人でも、獣でもない。

形を持たぬ“概念”が、存在を主張している。

これは敵なのか。

それとも――自分自身なのか。

時貞は、境界の中を覗き込む。

そこに、一瞬だけ映った。

背を向けた澪の姿。

振り向かない。

呼び止めても、声は届かない。

その距離は、今よりも遥かに遠かった。

「……行くよ」

震えはなかった。

それが、彼女の答えだった。

境界は、静かにほどける。

だが、完全には開かない。

――まだ、時ではない。

そう告げるように、気配は霧へと溶けた。

しかし、時貞は理解していた。

一度触れた理は、もう離れない。

覚醒は終わった。

だが、武器はまだ手にしない。

ここから先にあるのは、力ではない。

選択だ。

戻る道は、すでに消えている。

天草四郎時貞は、雪道を引き返しながら、静かに悟った。

自分はもう、

“試される者”ではない。

理を選び取り、世界を見続ける者――観測者となったのだ。

🔮クロノスの予告

観測は始まった。

だが、介入はまだ許されない。

理が刃となる時、

彼女は選ぶだろう。

救うか、断つか。

次に動くのは――人の側だ。

▶️次回予告

第33話:接触 ― 武器試練への扉

沈黙は破られ、

理は形を求め始める。

天草四郎時貞が“選ばれる”のではなく、

選び取る時が訪れる。

戦国ファンタジー 第33話

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