❄️⚔️ 戦国ファンタジー 第49話

💫戦国ファンタジー💫
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「選別の夜――残る理、消える声」

冬の朝は、音を奪う。

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雪は降っていない。それでも、空気は重く、冷え切っていた。

城の回廊を歩く環は、昨日までとは違う違和感を覚えていた。

何かが起きたわけではない。

敵襲もなく、太鼓も鳴らない。

それでも確かに、空気が一段深く沈んでいる。

人は揃っている。

兵も、将も、誰一人欠けてはいない。

だが――“同じ場所に立っていない者”がいる。

それを、環は見逃さなかった。

静まり返った朝

広間では、いつもと変わらぬ配置で将たちが集っていた。

信長は地図の前に座し、視線を落としている。

誰も口を開かない。

いや、開けなくなっている。

昨日まで、苛立ちや不満を滲ませていた者たちが、今日は静かだ。

それは落ち着いたからではない。

言葉を失った静けさだった。

視線が合わない。

返事が一拍遅れる。

問いかけられると、誰かの顔を見る。

環は、その一つひとつを拾い上げていた。

「……もう、始まっている」

冬の陣は、確実に次の段階へ進んでいた。

目に見えない“離脱”

離脱者はいない。

だが、心が陣を抜けた者はいる。

それは、戦場でよくある“逃げ”とは違う。

身体はここにある。

命令にも従う。

だが、判断をしない。

「どう思われますか」

「お任せします」

「環様のご判断で」

そう言って、責任を外に置く。

それは一見、協調に見える。

だが実際は――覚悟を下ろした状態だった。

環は胸の奥で、冷たい納得を覚えた。

「耐えられなかったんだ……」

剣も血も必要ない。

ただ、時間だけが人を削る。

信長の沈黙

誰かが、ついに耐えきれず声を上げた。

「このままでは、士気が――」

信長は顔を上げない。

その一言で、会話は終わった。

「まだだ」

低く、短い声。

それ以上、誰も続けなかった。

続けられなかった。

信長は、全てを見ていた。

だが、救わない。

それは冷酷だからではない。

ここで動けば、冬の陣の意味が崩れるからだ。

「……選別は、終わっていない」

その沈黙こそが、最大の命令だった。

環の理解

回廊に戻った環は、立ち止まった。

指先に、冷たい空気が絡む。

かつてなら、ここで剣を抜いていた。

士気を立て直すために。

恐怖を振り払うために。

だが、今は違う。

「ここで剣を抜けば……」

環は、自分の考えをはっきりと言葉にした。

「耐えられない者まで、次へ連れていってしまう」

それは、優しさではない。

理を歪める行為だ。

この陣で試されているのは、

強さでも、忠誠でも、数でもない。

――理由だ。

なぜ、ここにいるのか。

なぜ、耐えるのか。

なぜ、信じ続けるのか。

それを自分の中に持っているか。

残る者たち

残る者には、共通点があった。

・不満を口にしない

・問いを投げない

・答えを他人に預けない

彼らは、静かだった。

だが、揺れていない。

少数だが、芯がある。

その存在は、周囲の空気を僅かに支えていた。

環は、その顔ぶれを一人ずつ思い浮かべた。

「……次に進めるのは、この者たちだけだ」

それは冷たい判断ではない。

未来を守るための選別だった。

冬の陣の正体

この陣は、勝敗を決める戦ではない。

城を落とす戦でもない。

次の時代に立てる者を、ふるいにかける陣。

剣を抜かず、血を流さず、

心だけを試す。

冬は深い。

だが、ここを越えられぬ者に、春は来ない。

信長は、それを知っていた。

環も、完全に理解した。

夜、再び静まる

夜が来る。

昼よりも、さらに静かだ。

城の中で、差ははっきりした。

・沈黙に耐える者

・沈黙から逃げる者

誰が悪いわけではない。

だが、進める者は限られている。

環は天守から月を仰いだ。

雲に隠れかけた月は、それでも消えなかった。

「……理は、残る」

時間が、そう告げている。

🔮 クロノスの導き(第49話)

時は、静かな夜に最も多くを奪う。

剣を抜かぬ戦が、心を試す。

残るのは、声を上げた者ではない。

理由を失わなかった者だけだ。

⏳ クロノスの時間予告

次に刻が動くとき、

迷いは“行動”として表に出る。

冬の陣は、

沈黙から選別へ――。

❄️⚔️ 戦国ファンタジー 第50話へ続く

⚔️ 戦国ファンタジー 第50話

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